大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(ネ)1159号 判決

証拠を綜合すれば、昭和二十九年五月十三日被控訴人の使用人である小島基一が被控訴人の横浜営業所長名義を使用し、控訴人にあて金額五十万円満期同年八月十二日支払地振出地横浜市支払場所株式会社神戸銀行横浜支店と記載した約束手形一通を振出し交付した事実を認めうる。

よつて右小島基一が控訴人主張のように被控訴人を代理して右約束手形を振出す権限をもつていたか否かにつき審査するに、証言を綜合すれば、被控訴人は横浜市にその出張所(後に営業所と改称)を設け、小島基一をその所長に選任し、同人は横浜市役所関係の工事の請負入札等につき被控訴人を代理し、出張所長(後に営業所長)名義を以てこれをなすことを許されたが、銀行取引関係においては工事資金融通のため被控訴人の取引銀行である株式会社神戸銀行横浜支店に限り横浜出張所長(営業所長)名義を以て約束手形を振出す権限を認められていたに過ぎず、それも昭和二十九年三月二十日以後は事前に被控訴人本社の了解を得なければならないことに制限せられた事実を認めるに足るべく、被控訴人の使用人である小島基一の代理権限は右認定の範囲に限局せられ、従つて右小島基一の右手形振出行為はその権限をこえたものといわねばならぬ。

よつて右小島基一の本件手形振出行為につき控訴人主張のような代理権ありと信ずべき正当の事由ありや否やにつき審査するに、小島基一は関某に手形を以て金百万円を貸付けたところその弁済を受けられなかつたところから、その回収のため、同人は自己個人の資格において小野某より自動車車庫の建設を請負い、これを野坂電建工事株式会社に下請せしめ、同会社はその鉄骨工事の部分を更に控訴人に下請せしめようとしたが控訴人においては同会社の資力信用を信用せずこれをちゆうちよする色を示したところ同会社社長である野坂耕作より右工事は元来被控訴人の請負工事であり、被控訴人およびその横浜出張所長である小島基一はいずれも信用すべきものであることを告げられ、殊に被控訴人の取引銀行である株式会社神戸銀行横浜支店につき被控訴人および小島基一の信用状態を調査したところ、小島は被控訴人を代理し、月に二三百万円の手形を振出しているが全部支払われ、官庁方面の仕事をも請負つている旨の回答を得たので下請をすることとなり、その工事代金支払のため本件手形を被控訴人の代理人である小島基一が振出した有効なものであると信じ、その交付を受けた事実を認めうる。

小島基一の本件手形振出がその権限をこえてなされたものであること前に示したとおりであるけれども、右認定のような事情のもとにこれを受取つた控訴人が小島基一において被控訴人を代理し本件手形を振出す権限ありと信ずるも何等の過失なく代理権ありと信ずべき相当な事由あるものと認めるのを相当とする。

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